本研究は、世俗化が進行する西洋後期近代において「聖なるもの」と文化の関係がいかに理解されたのかを、ドイツ近代の思想家-ジンメル、カッシーラー、ティリッヒ、ベンヤミン-の分析を通して明らかにした。これらの思想家は、立場や方法の相違にもかかわらず、分化した諸文化一領域としての宗教と、その根底にある宗教(あるいは神話)という二重性の枠組みで「聖なるもの」を捉えた。この認識は、後期近代における文化的共同性の特質を捉えるために不可欠の視点を提供し、世俗化と脱世俗化の相反する現代の動向を理解する手がかりとなるものである。
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