1.前年度にアルゼンチンで収集した資料の分析を中心とする中間報告を行い、同時にアルゼンチンにおける生政治と文化生産の関係を考察する試論をまとめた。(1)中間報告として、日本ラテンアメリカ学会(於:筑波大学)で「「記憶の文化」と失踪者-アルゼンチンにおけるメモリアル、アート、証言の現在」とする発表を行い、他国との比較等をめぐって大変有意義な議論・助言を得た。 (2)日本学術振興会「人文・社会科学振興のためのプロジェクト」と関連づけて、ワークショップ「郊外(sub-urbia)」と「暴力」-パリ・プラハ・ブエノスアイレス」でフリオ・コルタサル論を生政治の側面からアプローチした試論を提示。ポリス概念と生政治に関する理論研究を応用。2.アルゼンチン同様に人権抑圧の歴史を刻んだチリ・ウルグアイに赴き、資料収集と現地調査を行った。またブエノスアイレスとの比較を行うために、アルゼンチンの内陸地域でのインタビューと資料収集を行った。また、反ネオリベラリズム運動を研究しているアメリカの社会学者マリーナ・シトリン氏へのインタビューを行った。 (1)ウルグアイのモンテビデオで「記憶博物館」「記憶モニュメント」等の記憶記念碑の現地調査、人権運動センターでのインタビュー、人権活動ジャーナリストへの調査。 (2)アルゼンチンのフフイ州、エントレリオス州、トゥクマン州で、地元の人権活動家にインタビュー調査。 (3)チリのアジェンデ政権に対する軍事クーデタ記念日の9.11を中心に、チリにおける軍政の記憶に関する資料収集。 (4)反G8関連で来日したマリーナ・シトリン氏へのインタビュー。2001年の反ネオリベ叛乱以降のアルゼンチン政治の変容に関し意見交換。 3.「アフェクトの政治」と「生政治」に関する理論研究を深める。とくにG・アガンベンにおける生政治概念への理解を深め、そのスキームの文化研究への応用可能性を探った。
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