本研究の目的は、1930年代にそれぞれ独自の仕方で卓抜な技術論を唱えたことでしられるカッシーラーや三木清やハイデッガーを主題的に取り上げることによって、「技術哲学」の新たな可能性を「新歴史主義」的に究明することでみる。いいかえれば、今では忘却されてしまった歴史のスクラップを丹念に渉猟し、それらを参照軸としつつ、カッシーラー・三木・ハイデッガーの技術哲学の特質をその時代的背景から浮かび上がらせること、これが本研究のめざすところである。 そこで、このような研究を着実に遂行するために、まず平成19年度になされたのは、研究主題となる上記3人の哲学者が「技術の哲学」について実際にどのようなことを述べていたのか、比較思想的に解明することであった。こうした趣旨で執筆されたのが、論文「技術哲学の可能性-カッシーラー・三木・ハイデッガー-」(津山工業高等専門学校紀要、2008年)であった。 上記の成果を継承し、平成20年度は、技術が現代文化の形成にどのような影響を与えているか、技術論の立場がら考えてみた。それが、論文「グローバル/ローカルな場としての技術哲学-カッシーラー・三木・ハイデッガー」であり、『インター・カルチャー-異文化の哲学-』(晃洋書房、2009年)に収録された。論文集というかたちで、研究実績をこのように早い段階で公表できたことは、実によろこばしいことである。
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