本研究の目的は、1930年代にそれぞれ独自の仕方で卓抜な技術論を唱えたことで知られるカッシーラーや三木清やハイデッガーを主題的に取り上げることによって、技術哲学の新たな可能性を新歴史主義的に究明することであった。この趣旨に添って、これまで本研究は、3人の哲学者に関する歴史資料を精査しつつ、論文や著書を公表してきた。本研究はこのような歴史研究をとおして技術哲学の新たな可能性をさぐろうとしたのであり、そのために必要となったのが「技術哲学の基礎づけ」である。 そこで、本研究は本年度、これまで調査して得られた歴史的知見を現代へと活かしつつ、「技術文化」「臓器移植技術」「適正枝術」といった歴史的事例や現代的事例を検討することによって、技術論の哲学的省察を試みた。そのさい重要になったことが、「技術の政治性・倫理性・複数性」を視野に入れた、技術についての新しい見方である。 このことを詳細に論じたのが、論文「技術の政治性/倫理性/複数性--事例研究による技術哲学の基礎づけ--」である。
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