研究概要 |
アテナイ人彫刻家およびイタリア半島の工房についての基本文献を収集した上で、アテナイ人彫刻家に関しては、まず最も有名なフェイディアスについて考察、美学会東部会で発表。それ以外の群小のアテナイ人彫刻家たちについては、古代文献、碑文のデータをまとめ、紀元前6世紀から紀元後3世紀に至るまでに確認される全アテナイ人彫刻家のリストを作成、それをもとに考察を行い、論文「越境するアテナイ人彫刻家」を執筆した(『西洋美術研究』13,2008年出版予定)。イタリアの工房については、ソンマ出土の2体の彫像について、シンポジウムで発表。パシテレス工房に関しては、東京大学生産技術研究所池内克史教授研究室の研究協力を得て、イタリア、ナポリ国立考古学博物館で前1世紀の《踊り子たち》と呼ばれる5体のブロンズ像、およびパシテレス工房に帰されるナポリ国立博物館所蔵の通称《オレステスとエレクトラ》について調査・3D計測した。データを処理して両者を比較した結果、《踊り子たち》の頭部や衣紋はことさらにヴァリエーション豊かであることを強調しているにもかかわらず、足の形といったような副次的部分においては似た形が繰り返され、特にうち1体の足は、《エレクトラ》の足の形と3次元的にぴったり一致することを発見した。この時代、彫刻家の工房が既存タイプの身体パーツの原型を所有し、それを利用して群像を制作したらしいことが確認された。
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