1. アテナイ人彫刻家の活動状況については、論文「越境するアテナイ人彫刻家」を出版。碑文や文献を通して知られているアテナイ人彫刻家、全217人をまとめ、データを他の研究者たちのために供した。また、既存の研究では抜け落ちていた、アテナイ彫刻活動の実態を明らかにした。さらに、その成果を取り入れながら、昨年度口頭発表した内容に修正を加え、論文「フェイディアス作、《アテナ・パルテノス》(1)-賦与された機能と知覚される神性-」を執筆・出版し、古代アテナイにおいて地元の彫刻家の手で彫られたばかりの新しい神像がどのように認識されていたのか、その意味を問うた。 2. 南イタリアにおけるギリシア人彫刻工房については、平成19年度に3D計測したナポリ考古学博物館所蔵の《踊り子たち》と《オレステスとエレクトラ》の後世における修復箇所を確定するために、再調査および写真撮影。参考作品をバイアのカンピ・フレグレイ考古学博物館、ベルリン国立美術館で調査した。その成果を取り入れながら、研究協力者、東京大学大学院情報学環池内克史教授の研究室で、3D計測のデータを解析。2つの作品の中のいくつかの足について、その形状が3次元的に一致することを見出し、《踊り子たち》と通称される群像が、パウサニアスが記す紀元前1世紀の彫刻家ステファノスの作品《アッピアデス》と関係していることをつきとめた。このデータ解析の技術的な側面に関しては、筑波大学で開かれたシンポジウムで、美術史学的・考古学的考察に関しては東京大学での国際シンポジウムで、それぞれ口頭発表した。その後、昨年度口頭発表したソンマ・ヴェスヴィアーナ出土の2体の大理石像について、イタリア語の論文"Due statue marmoree da Somma Vesuviana : Dioniso e la Peplophoros"を執筆した(平成21年度出版予定)。
|