研究課題
ナポリ国立考古学博物館に所蔵されている、紀元前1世紀の5体のブロンズ像《踊り子たち》と、紀元前1世紀のオリジナルに由来する大理石製2人像《オレステスとエレクトラ》について、平成19年度に3次元ディジタル計測、平成20年度に肉眼と通常の写真撮影による追加の作品調査をおこなったが、今年度はその解析法のさらなる改良の試みと、得られたデータから美術史上意義のある議論の構築を目指した。上記2つの群像はどれも違う顔、違うポーズの、まったく別の人物像なのだが、3次元ディジタル計測によって得られたデータを比較すると、いくつかの足の形状がぴったりと一致した。これは、ブロンズ像・大理石像をつくる際に使用された足の原型がおなじものに由来すること、つまりヘレニズム末期からローマ帝政期という時代にギリシア彫刻の需要が急速に高まったことに対応して、ギリシア人の彫刻工房が彫像の副次的な部分の原型を使い回し、生産の効率化を図っていたことを示した。この成果は、3次元ディジタル計測による形状比較という技術が、制作工房の同定に決定的なデータを与えうるという展望を開くものであった。この成果に、平成19年度におこなった古代アテナイ人彫刻工房に関する研究もあわせ、『ギリシア人彫刻工房の研究』を執筆した。これらの成果の一部については、筑波大学で開かれたシンポジウムで口頭発表した(招待講演)。さらに2010年5月21日には、ナポリ大学で開かれるヘルクラネウム学会で口頭発表する予定である(招待発表)。その他、南イタリアのソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡で新たに出土した彫刻に関しては、2003年に出土した《ディオニュソス》と《ペプロフォロス》を、イタリア語論文として出版(共著)。2007年度に出土した《シレノス》と《ディオニュソスの小ヘルマ》を東京大学での国際シンポジウムで発表した。
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都市を描く-東西文化にみる地図と景観図-(東北大学出版会)
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