(1)イタリア・ルネサンスにおけるシビュラの文学・思想的研究として、(1)ジョヴァンニ・ポンターノ、ヤコポ・サンナザーロらナポリの人文主義者、(2)エジディオ・ダ・ヴィテルボら教皇庁にありながら、マルシリオ・フィチーノのフィレンツェ・プラトン主義の影響を受けた神学者、(3)ジョヴァンニ・ネージらフィレンツェの宗教改革者の言説を検討して、15世紀後半のイタリアにおけるシビュラへの広範な関心について考察した。 (2)イタリア・ルネサンスにおけるシビュラ文献の研究として、(1)15世紀初頭にローマで成立した「12人のシビュラの託宣」と(2)フィリッポ・バルビエーリの『聖なる博士ヒエロニムスとアウグスティヌスの不一致』に収められたシビュラの託宣について、パリのアルセナル図書館、リエージュの修道院図書館などで、写本を含めた調査をおこなって、校訂版を作成するための基礎的な作業をすすめ、合わせて、中世後期のシビュラ文献との関連について考察した。 (3)イタリア・ルネサンスのシビュラ図像の研究として、(1)アゴスティーノ・ドゥッチョによるリミニのテンピオ・マラテスティアーノ、(2)ドメニコ・ギルランダイオによる、フィレンツェのサンタ・トリニタ聖堂、(3)ペルジーノによる、ペルージアのコッレージョ・カンビオ、(4)フィリッピーノ・リッピによる、ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂にそれぞれ描かれた複数のシビュラ像を、上述の文学・思想的背景、およびシビュラ文献との連関で考察した。
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