フランスにおける日本美術史誕生の背景にあるガストン・ミジョンの役割に焦点を当てた研究の最初の1年は、資料収集及び最初の成果発表という面で、非常に実り多いものとなった。アメリカ、フランスでの研究滞在の際、ガストン・ミジョンとルーブル美術館最初の日本美術コレクションの歴史に関する多くの情報と資料を入手することができ、フランス国立古文書館及びルーブル美術館、装飾美術館、ギメ美術館付属図書館で行った調査では、ミジョンの祖先にあたる17世紀、18世紀の著名な高級家具師達や、ルーブル美術館学芸員としてのミジョンのキャリアに関する多くの古文書を閲覧することができたが、そのほとんどは未刊資料である。また、ルーブル美術館に初めて導入された日本の美術品の歴史をたどる貴重な資料を集めることもできた。またお茶の水女子大学国際日本学シンポジウム(2007年7月8日 セッションII)では、「ヨーロッパにおける日本美術史の成立と発展-フランス及びイギリスの主要な日本美術コレクションの果たした役割-」と題したテーマセッションを開催した。参加者、発表内容は次の通りである。ロール・シュワルツ(司会、企画担当者):テーマセッションのプレゼンテーション/クリストフ・マルケ(フランス国立東洋言語文化研究所教授:「19世紀後半のフランスにおける日本美術史学の黎明期」/鈴木 廣之(東京学芸大学教授):「誰が日本美術史をつくったのか?-明治初期における旅と収集と書き物-」/永島 明子(京都国立博物館研究員):「フランスとイギリスの博物館で愛された日本の漆器 特にマリー・アントワネット蒔絵コレクションの成立と日本美術史上の役割について」/彬子女王(オックスフォード大学東洋研究所博士課程):「ウィリアム・アンダーソン・コレクションの再考」 /ニコル・ルーマニエール(セインズベリー日本芸術研究所所長):「大英博物館所蔵日本の陶器コレクションの歴史」。極めて内容の濃い革新的なものとなった本セッションの議事録は、比較日本学研究センター年報(2008年3月号)に記載されている。
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