東南アジア近代美術の形成と展開に日本が果たした役割について、とくに「大東亜」戦争における占領地において日本軍政が行った美術「交流」が果たした役割について検証するため、フィリピンにおいて現地調査を行い、資料を収集し、関連作品を実見した。 フィリピン大学バルガス美術館、アテネオ・デ・マニラ大学図書室、ロペス美術館図書室、国立図書館にて資料調査と収集を行った。また、フィリピン大学美術史教授サンティアゴ・ピラー、フィリピン大学バルガス美術館キュレーターパトリック・フローレスにインタビューをし、情報収集と意見交換を行った。 また、前年度に現地調査を行った昭和16年に仏領インドシナを巡回した「日本現代美術展」と昭和18年に日本各地を巡回した「仏印現代美術展」を始め関連行事について、日本国内における文献資料調査を国際交流基金ライブラリー、東京国立近代美術館、川崎市民ミュージアム等で行った。 こうした調査を通して、日本による東南アジア占領が果たした近代美術形成に対する役割の検証に関する基礎的な資料やデータを収集することができた。とりわけ、これまで詳細の不分明であった日本軍政期のフィリピンにおける軍政の美術政策、公募コンクール美術展の詳細を、多少とも解明したことは大いに意義があると思われる。
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