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2008 年度 実績報告書

ホスピスの現場からみたアートの可能性について

研究課題

研究課題/領域番号 19520104
研究機関金沢美術工芸大学

研究代表者

横川 善正  金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (90106617)

キーワードターミナル・アート / ホスピス / コミュニケーション
研究概要

本研究の研究課題に即して、本年度は「アートをとおしての癒しと意欲の回復-その支援のありかた-」について考察した。調査対象は、昨年に引き続き、我が国の緩和ケア施設および英国およびスウエーデンのホスピスでの患者、家族、医療者、ボランティアとした。
英国では、サウザンプトンにある公立のホスピスCMH{Countess Mountbatten Hospice}を訪問し、アート・グループの活動を視察した。ホスピスにおいて、限りある生命と時間を濃密に生きようとする患者やそこに寄り添うボランティアの姿勢のなかに、自己実現と自己表現という視点での、現代アートとの精神的相同を見いだすことができた。また、この施設を支えるボランティアの教育制度について調査した。デイケアセンターに通う末期患者と彼等に寄り添う地域ボランティアの活動は、これからの日本のホスピスの運営にたいして示唆するところが大きい。
高福祉国家といわれる北欧スエーデンでは、エーテボリにあるアンガーデンズ・ホスピスを取材した。ここでは、余命3週間という極めて限られた状況において迎えられる患者にとって、いかなるアートが可能かという実例を紹介された。絵画のみならず、ビデオによる撮影、詩集の出版などをとおして、制作者である患者のみならず、それを支えるボランティアの資質と能力の高さを垣間見みた。
国内では、済生会金沢病院の緩和ケア病棟において、患者と家族を交え、懐かしい想い出を描く作業を試みた。幼い頃の記憶が絵画のなかに蘇ることで、希薄になった自分の存在をより愛おしく自覚する様子が窺えた。こうした、患者と家族の癒しと意欲の回復を目的アート・セラピーは、医療者とアーチストの恊働による、患者の記憶の共有と可視化がもたらしたものと考えられる。さらに当病院にて、「医療と芸術が恊働する時代」というテーマで、医療関係者とボランティアを対象に、イギリスとイタリアそしてスエーデンにおける、地域ボランティアによって推進されるホスピス・アートを取り入れたケアの実態とその意義を紹介した。上記のホスピスにおける調査と実習をとおして、医療と芸術との恊働が末期ケアにもたらす補完的可能性を確認した。どうじに、いわゆる「弱者」にたいする地域社会との連携によるアートの実践のなかに、これからの我が国の芸術教育が取り組むべき方向性を見いだした。

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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