研究概要 |
本年度は、近年その存在が確認された快慶作例のうち京都市百万遍智恩寺阿弥陀如来像、京都市泉涌寺悲田院宝冠阿弥陀如来像に関する調査と研究を行った。前者は造像銘等の記事が確認されていないものの、かつて申請者が調査を行った京都市遣迎院阿弥陀如来像との間に造形上の類似点が多く認められるもので、その表面に施された截金の状態などの比較を行った。後者は大津市歴史博物館による内視鏡調査により、「安阿弥陀仏」銘が確認されたもので、快慶の初期作品であることがわかった。同形の作例は、広島耕山寺の作例や、滋賀県石山寺大日如来坐像、東京芸術大学大日如来坐像などとの比較により快慶並びにその工房作の問題について今後、注目すべき作例であることが分かった。またフランス、ギメ美術館が所蔵する鎌倉時代の四天王像、京都・大報恩寺十大弟子像などについても調査を進めた。 こうした一連の調査により,快慶作例の分布圏と造像圏の背後に想定されるものとして、教団成立間もない時期の法然の浄土宗、大報恩寺議空を中心とする天台関係の人師の動向、また天台座主慈円と四天王寺、青蓮院といった場所を契機とした快慶をあぐる人間関係が本研究により、より明らかにされたものと考える。また快慶の周辺の肥後別当定慶、湛慶、行快、宗慶といった仏師達による作品と快慶作例との関係を造形並びに人間関係の上からひもとく作業を行った。 今後、日本各地に伝来する快慶ならびにその工房作と地域性の問題などについて研究を進めてみたいと考えている。
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