研究課題/領域番号 |
19520114
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
山本 陽子 明星大学, 造形芸術学部, 准教授 (20350283)
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研究分担者 |
柴田 雅生 明星大学, 日本文化学部, 教授 (30196430)
矢吹 道郎 明星大学, 情報学部, 准教授 (90166570)
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キーワード | 奈良絵本 / 絵巻 / 武士 / 武者 / 平家物語 / 北野通夜物語 / 十番切 / web公開 |
研究概要 |
絵巻の中で武士がどのように描かれて来たかについて、近年、主に歴史家の立場から多くの言及がなされているが、美術史的な面からの探究は少ない。そこで絵巻の武士の特徴的な肉体表現や顔貌について、起源と描かれる状況を、近世初期の明星大学本『平家物語』絵本をデータベース化しつつ考察するのが、本研究の目的であった。ただし昨年度撮影した『平家物語』の挿絵では、武士の描写が一般の合戦絵巻の武者表現と異なっていたので、同時代の『北野通夜物語』『十番切』を追加撮影し、本年度は各時代の絵巻・絵本の武士の顔貌との比較検討を行った。 多くの合戦絵巻の武者の顔貌は、頬骨の出た角張った輪郭・見開いた目・大きい鼻と口等の共通する特徴を持つ。これらの武士の顔の輪郭が途切れていることから、最初に輪郭が描かれる引目鈎鼻の顔とは手順が違い、兜の中に目鼻を描いた後で輪郭が描かれること、兜で隠れる眉の代償として目鼻立ちが大きく描かれることを指摘し、このような武者表現が受容される背景として、仏教絵画の金剛力士等の憤怒像の影響と近似を挙げた。これらは今後、絵巻の武士像を絵画資料として用いるときの基礎資料となろう。 撮影された明星大学本『平家物語』・『北野通夜物語』・『十番切』については、柴田雅生が書誌調査と国語学的検討を行い、挿絵は山本陽子が『平家物語』、研究協力者の近藤真子が『北野通夜物語』、研究協力者の大月千冬が『十番切』を検討し、研究協力者の出口久徳が他の奈良絵本『平家物語』について、矢吹道郎がデータベース構築に関して述べ、成果は報告書として出版された。 また明星大学本『平家物語』・『北野通夜物語』・『十番切』の挿絵・詞書を含む全図版は、奈良絵本・絵巻のデータベースとすべく、柴田雅生による書誌・翻刻、山本陽子と近藤真子・大月千冬による挿絵解説等を伴って、矢吹道郎によりデータベース構築が行われ、WEB公開された。
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