2007、2008年度に続き、2009年度も現地調査を行い、レクショナリー聖者暦のデータを収集した。現地調査を行った図書館は以下である。ヴァティカン図書館(ローマ)、パラティーナ図書館(パルマ)、ギリシア国立図書館(アテネ)、総主教座附属教父学研究所(テサロニキ)、総主教座附属図書館(イスタンブール)。また写本挿絵と聖堂壁画の関連(同一工房の画家が、両ジャンルの制作を行った可能性)を確認するために、カストリアを始めとするギリシア各地、マケドニア共和国、カッパドキア等で聖堂壁画の調査も並行して行った。 レクショナリー写本に関しては、新たにアトス山ラヴラ修道院A92写本が、コンスタンティノポリスのブラケルネ聖母聖堂のために制作されたものであることが判明した。既に代表者はアトス山イヴィロン修道院1番写本が、ブラケルネ聖堂内聖ヤコボ礼拝堂のために制作されたものであることを明らかにしたが、両写本の関係について、今後考察を重ねなければならない。 またレクショナリー挿絵の領域でイコン的な図像からナラティヴな図像への過渡期の作例として重要な、アトス山ラヴラ修道院A86写本(10世紀)が、コンスタンティノポリスの聖使徒聖堂のために制作されたものである可能性が浮かび上がってきた。これについても今後分析を重ねたい。 近年発見されたアトス山ヴァトペディ修道院宝物庫のレクショナリーは、昨年度調査を行ったギリシア研究所ギリシア語2番写本(ヴェネツィア)と非常に類似したプログラムをもうている。同一工房の可能性を含めて、研究対象に含めることとした。
|