最終年度ということで、本研究過程で学びえた、院政鎌倉期の擬古物語における『伊勢物語』『源氏物語』からの絵画・注釈的享受という観点を加味しながら、研究を進めた。 2009年5月23、24日の両日、平成21年度中古文学会春季大会(国士舘大学)に参加した。物語作品についての研究発表はもちろん有益であったが、特に、第一日目のシンポジウム「源氏物語の絵と注釈」は、注釈書の書説と物語の視覚的な展開とが不即不離であり、それが擬古物語のあり方とも大きく関わるものであることを再認識させられた。 8~12月にかけて、断続的に『九曜文庫蔵源氏物語享受資料影印叢書』など、院政期から中世にかけての物語関係図書を購入した。擬古物語に及ぼす平安時代物語の影響について、絵画と注釈、さらにはその文学史的環境などの諸観点から調査検討を加えた。また、2010年1月には引歌検索の迅速化のために、『萬葉集電子総索引』(CD-ROM)も購入。 加えて、12月24日には東北大学附属図書館、また2010年1月14日には国文学研究資料館、にそれぞれ出向き、擬石物語関係資料についての補足的な文献調査を行なった。特に、物語の絵画化については、いくつかのあらたなる発見もあった。 それらの成果を踏まえて、2月10日、論文集『伊勢物語・享受の展開』に、擬古物語の問題とも関わうせつつ、「中世の伊勢物語注釈とその周辺-物語草子から近世絵画への波及-」を執筆した。同書は、2010年5月に竹林舎より刊行予定である。
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