本研究は、平成19〜21年度の3年計画で、鏡花文学において、「対時代性」と「伝統性」は不可分の関係にあるという見通しのもと、鏡花文学の「成立」と「受容」の諸相を、(1)同時代の出版メディアの言説状況、(2)同時代の近代作家の言説や創作活動、(3)古典文学の研究や出版の動向、(4)能狂言・歌舞伎・落語・邦楽等の古典芸能の状況、(6)鏡花文学研究史、(5)近現代における鏡花文学の受容と再生産(映画・舞台芸術)の状況、等々を広く視野に入れて調査し、鏡花文学の位相と特質を再検証するものであり、平成19年度は資料の収集・整理を中心に、下記(1)〜(5)の研究活動を行った。 (1)泉鏡花の同時代評を収集・整理・保存した。 (2)明治・大正・昭和戦前の伝統芸能(能楽・歌舞伎・伝統芸能・歌謡等)に関わる記事を、「文芸倶楽部」「太陽」「帝国文学」「三田文学」「早稲田文学」「新思潮」「校友会雑誌」等の雑誌で検索収集した。 (3)鏡花を原作とする舞台芸術に関する資料を収集整理するとともに、鏡花作品を原作とする舞台、および鏡花作品の典拠となっている伝統芸能の舞台の観劇に努めた。 (4)鏡花作品の先行研究を収集整理し、「対時代性」「伝統性」という観点で読み直し、整理・検証するとともに、個別の作品研究に役立てるため泉鏡花研究会等に参加した。 (5)鏡花の古典受容の特質を解明するには、他の近代作家の古典受容のあり方との比較が必要である。学部・大学院の授業において、芥川龍之介・川端康成・三島由紀夫における古典文学摂取の状況について検討した。
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