研究概要 |
1.現存風土記の国を相対的に捉えるために周辺国を中心とした実地調査を行った。主に熊野・但馬・豊前の調査を行った。現存古風土記を周辺の風土や交通等を考慮しながら調査を行った。併せて文献(近世資料や民俗調査報告書等)を調査し、実地調査の文献的な裏付け調査をするよう心がけた。大和・畿内・九州の風土を相対化するのに大いに参考となった。 2.研究代表者の飯泉は、古風土記の故地(播磨及びその周辺の吉備)を調査し、風土の相対化に有効な情報を収集してきた。その成果の一部を「霊剣の主張-播磨国風土記讃容郡仲川里条の表現性」『風土記の表現』2009年、笠間書院232-247頁)として公刊した。また風土を相対化するための調査として、豊前の国府・国分寺及び風土記記載の香春町を調査をした。香春は三ッ山を神体とする祭祀装置であり、京都の伏見稲荷とも通じる祭祀形態をもつ。近畿と九州との文化的交流を考える際、大いに役立つと考えられる情報を収集出来た。その成果の一部を「記・風土記のタケルと軍団-八世紀の文芸サークル試論」(『古代文芸論叢』(おうふう,2009年3月,72-77頁)として公刊した。 3.代表者の飯泉は風土記を韻文と相対化するため、万葉集の感情表現を調査し、散文表現の特徴を考察した。その成果の一部を「怒りと恨み」(『生の万葉集』(高岡市万葉歴史館)として公刊した。同時代における表現を相対化して捉えるのに有効であった。
|