1. 『佐々木喜善全集』 (遠野市立博物館)に収録されていない文章の収集に努め、これまで公開されていない文章が発見されたが、それらを検討すると、従来の民俗学という枠組みでは収まらないジャーナリズムとの接点のあることが明らかになった。 2. 佐々木喜善が残した資料の中でも、『江刺郡昔話』『老媼夜譚』を分析して、男性の語る昔話と女性の語る昔話に差違があり、研究の題材として次第に昔話の価値が重んじられていった経緯をたどることができた。 3. 柳田国男が完形昔話を重視したのに対して、佐々木喜善は派生昔話を大切に考えていて、動物昔話や笑い話の中に込められた精神性を理解し、それを丁寧に記述することを心掛けていたことが浮かびあがってきた。 4. 佐々木喜善は昔話採集者として評価されてきたが、柳田国男とは違った昔話認識があるばかりでなく、むしろ、現代伝説や都市伝説という視点をもって、時代の最先端を行く学問を進めていたことがはっきりした。 5. 佐々木喜善は、同じ岩手県に生まれ育った宮沢賢治と親交があったが、ザシキワラシに関するやりとりばかりでなく、『注文の多い料理店』が『遠野物語』に深い影響を受けていることがわかった。
|