本研究の目的は、次の二点、すなわち(1)明治期の女性の国民化における和歌の機能について考察すること(2)女性表現における国家(政治)との共闘/対抗のさまを、とくに広範な一般読者を獲得したいわゆる大衆小説(通俗小説)と呼ばれるテクストの分析を通して明らかにすることを通して、日本近代における女性作家(女性表現者)の国民化の問題を考察することである。 第一点目については、大正期から戦後の昭和にわたって、女性歌人として名を知られた柳原白蓮について、とくにこれまでほとんど言及されずにきた戦中・戦後の活動をとりあげ、女性表現者と国家の問題として論じた。 第二点目については、吉屋信子作品についてのテクスト分析をすすめた。さらに、戦後の女性読者の動向について、とくに昭和三十年代のそれをとりあげ、戦前までとは異なる彼女たちの価値観、とくに女性観や、メディアと女性読者の関係について論じた。 ともに論文として発表した。 また、科研費課題と連関する問題意識から、少女小説についての著書を編纂し、刊行した。
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