研究概要 |
平成18年度までの「近代能楽史の地方展開」の研究成果を踏まえ,能楽史研究の対象を近代から現代に広げ,その地方展開の実質を解明する方向で発展させることを目的とする。近代における能楽の保護,後継者の育成という課題が,その後どう克服され,現代的な変容を遂げたか,新たな現代的課題とは何かを,近代研究の成果を生かして,また能楽界・学会の時々の動向を確認しながら,現代研究に結実させる。能楽史研究の基本資料である番組の収集に努め,番組掲載資料の体系的な把握を進めて,催事の地域的な偏りとその変化を追跡する。現代能楽史の通史的展望を地方,また中央と地方の視点から実現するために,地方自治体史における能楽関連記述の収集と整理を行い,これらの資料に基づく現代能楽史年表の作成に到達する。地方公共の能楽関連施設を訪問して,その沿革や利用実態,普及・振興の具体策などを調査し,地方自治体史の能楽記述の内容を検証すると共に,現代能楽史研究の方法を確立するための分析を行う。調査の対象を施設や施策等,文献以外にも拡大し,さらに伝統文化の継承と保存,地域振興などの研究も視野に入れることで,総合的な能楽史研究の在り方を問い直す意義を明確にする。
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