研究概要 |
本研究課題遂行にあたり,まず取り組んだ基礎作業は空海の書簡文本文の集成である。これまでに重ねられてきた校訂本文を集成し,書簡毎に諸校訂本文を一覧化した。その上で本文異同の所在を明らかにすることが可能となった。この作業と並行して,書簡表現の中で書儀に見られる表現との関連で考察すべき語彙・表現の抽出も進めることが出来た。 また,書儀関係の基礎作業としては,中国で出版されている研究書・中古漢語辞典での書儀語認定の状況とその用例について一覧化をおこなった。研究書からの抽出は十分ではないが,中古漢語辞典からの抽出はほぼ終えることができ,用例の入力と本文確認の作業を進めた。 以上が平成19年度前期における成果内容である。 引き続き,19年度後期においては,前期での作業精度をより一層高めるために,校訂本文や注釈などの集成を継続した。特に空海の書簡表現の抽出は書儀語の抽出と連動するため,出来る限り広範囲での語彙抽出をおこなった。そのため,抽出資料を一覧にまとめる作業までには至らなかった。 19年度後期の作業は20年度前期に引き続きおこない,「書簡語彙索引(稿)」「書儀語彙索引(稿)」の作成と校訂本文の完成に向けて研究と作業を進める。 これらの基礎作業によって得た知見を,本研究課題の中間報告の一つとして,「奈良朝後期漢文書簡の表現一萬葉集所載の書簡表現を中心に-」と題して上代文学会1月例会(於:二松学舎大学)で口頭発表をおこなった。また「奈良朝漢文書簡表現攷-「謹上」と「謹状」の用法を中心に-」と題する論文を長野県国語国文学会「研究紀要」第七号(刊行未定)に掲載予定である。
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