○勅撰和二十一代集所収真名序の注釈的研究に関しては、1、勅撰集序(真名・仮名両序)の用語・語彙の分類・整理を進めつつ、王朝漢語との位相差についての検証方法を模索した。2、既存の古今集真名序の注釈上の問題点を析出する一方、草稿の書き下し・口語訳を進めたがなお、成稿にはさまざまな問題点を残す。3、さらに、『礼記正義』序をベースとして、六朝詩論類を含めた「太一」「気」より、天-地-人に至る宇宙観/天人感応観のもと、外物に触れて感情が生起する(詩歌発生)の原理構造をチャート化し、古代詩歌論を支える思想的な枠組みを措定した。4、なおまた、東アジアに向けた和漢比較的な視野を開くため、古代音楽論(礼楽思想)のもとの詩歌発生論に関し、聞一多「歌と詩」論文の翻訳作業を進めほぼ定稿をまとめた。 ○1、「日本古典文学における和漢比較研究」と題する招待講演(2009.7.24・北京日本学研究センター)を行い、2、中国唐代における文学動向と平安朝におけるそれとの比較対象研究の一環として、公開シンポジウム「唐代伝奇と物語文学」(2009.9.26・平成21年度和漢比較文学会大会公開シンポジウム)のパネラーの一人として「漢文伝と唐代伝奇・物語」と題する報告を行い、和漢比較的研究の手法的可能性を広げた(同題の論文は学会誌『和漢比較文学』48号に掲載)。3、「古今集と漢文世界」(2009.10.16・京都女子大)の公開講演のほか、国際シンポジウム「東アジアの『今昔物語集』と<予言文学>」(2010年3月19~21・北京日本学研究センター主催)に参加し、日・中・韓・越4ヵ国の日本学研究者の討議を通じ、漢字(儒教)文化圏における文学研究の在り方に関する知見を得るとともに、漢喃研究院スタッフとの研究交流を行う一方、その他の地域において、礼楽及び勅撰和歌集関連資料の調査・収集、研究交流を行った。
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