平成20年度研究期間中の研究成果の概要は以下の通りである。 (1) 平成21年度刊行予定『伝承文学全注釈叢書女訓抄』(三弥井書店)の注釈作業。『大東急記念文庫善本叢刊』所収の寛永16年古活字版を底本とし、穂国文庫本、寛永19年整版本、大阪女子大学写本、以上3本の校合作業を行い、校訂本文を作成。その本文に、注釈・補注からなる全注釈形式による下原稿執筆。全10章中、本年度下原稿終了分は第8章途中まで。 (2) 『月庵酔醒記』輪読会(月1回、於:南山大学)に出席し、服部幸造・美濃部重克・弓削繁編『中世の文学月庵酔醒記(中)』(平成20年9月、三弥井書店)の注釈作業に参加し、担当箇所の校訂本文の作成および頭注・補注を執筆した。 (3) (2)で執筆を担当した「男女のうはさ」の注釈過程で「二条殿、女君にやり給ふ文」に引かれた『仮名教訓』(『からすまる帖』)の伝本蒐集を行い、それを切っ掛けとして、近代における享受の有り様を、「明治二十四年の『からすまる帖』-福羽美静にみる戦略としての近代女性教育-」(『名古屋大学文学部研究論集』平成21年3月)で論じた。 (4)女訓書にみる〈知〉の継承という観点から、『平家物語』など軍記物語に登場する女性像が、近代の教育現場でも利用されていることを、「「女子の悲哀に沈めるがごとく」-明治二十年代女子教育にみる戦略としての中世文学-」(『少女少年のポリティクス』2009年2月、青弓社)で論じた。 (5) 名古屋大学中央図書館友の会主催「ふみよむゆふべ」12月例会にて、「女性が学ぶということ-日本文学にみる〈女訓書〉の世界-」と題して講演を行った。
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