平成21年度研究期間中の研究成果の概要は以下の通りである。 (1)『伝承文学善注釈叢書』(三弥井書店)の注釈作業。『大東急記念文庫善本叢刊』所収の寛永16年古活字版を底本とし、穂国文庫本・寛永19年製版本・大阪女子大学写本、以上3本の校合作業により作成した本文に、注釈・補注からなる全注釈形式による下原稿の執筆。 (2)『月庵酔醒記』輪読会(月1回・会場:南山大学)メンバー執筆による『月庵酔醒記(下)』(服部幸造・美濃部重克・弓削繁・編、平成22年度刊行予定、三弥井書店)中、担当箇所の本文作成・頭注・補注を行い、現在校正作業中。 (3)『月庵酔醒記(中)』で執筆を担当した「男女のうはさ」に引かれた『仮名教訓』の受容史を追う課程で、近代におけるひとつのありかたとして、跡見花蹊に注目し、明治初期の女性教育と習字という側面から、「「世界の花とならむ事を望む」-跡見花蹊にみる"知"の継承と明治初期の女性教育-」(『名古屋大学文学部研究論集』平成22年3月)において、女訓と習字手本というふたつの役割について具体的に論じた。 (4)"知"の継承という観点から、明治期の女性教育に関して、とくに漢学の素養を有する武家の娘たちを中心に、先駆者となる存在についての評伝を、ジアース『文部科学教育通信』にて「"知"の継承から考える明治期の女性教育-先駆者の気概に学ぶ-」と題して連載中である。
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