本年度は、寛政期以降の秋成の和文作品およびその周辺の関連資料の調査および収集を行った。特に谷川好一氏所蔵の秋成関係資料は、『春雨梅花歌文巻(仮題)』をはじめとして非常に貴重なものであり、本研究の重要な資料となるので、業者に依頼して全点をデジタルカメラで撮影・収集した。また天理大学附属天理図書館・東京都の静嘉堂文庫・大阪大学附属中之島図書館・京都の新日吉神宮・京都市の中野義雄氏宅・関西大学図書館の秋成和文資料またはその関連資料を調査閲覧した。 秋成の作品本文の研究については、刊本『文反古』の本文の生成と変容のあり方について考察し、学会発表や論文公刊という成果につなげた。その第1は、秋成の消息文8編を『藤簍冊子』の編者昇道が写した新出資料(新出秋成和歌をもふくむ)が、『文反古』所収の消息文の成立に深くかかわることを立証し、日本近世文学会で発表した。また天理大学附属天理図書館所蔵の『文反古稿』をふくむ草稿的な原稿から、刊本『文反古』が生成するあり方について、2本論文を執筆した。そのうちの1本は、テクストの変容にあり方を概観し、「閉じたテクスト」が「開かれたテクスト」に成ることを具体的に考察した。またもう1本は秋成の和文全体に、「めめしさ」という基調があることを、『麻知文草稿類』なども用いて論じた。
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