1.研究成果の具体的内容: (1)2009年7月:「"移動"の文学表象とジェンダー:植民・戦争・引揚げ」のテーマで国際シンポジウムを開催し、研究代表者・分担者・協力者がそれぞれ研究発表を行った(伊豫谷登士翁「望郷と脱出:「居場所」の喪失と「再生」のものがたり」、ブレット・ド・バリー「森崎和江の『ぶざまな愛への讃歌』における移動、労働、セクシュアリティ」、朴裕河「引揚げ文学序説:'日本のカミュたち'をめぐる二重の忘却」、西川祐子「追放と再追放:八木秋子日記を読む」、坪井秀人「パラレル・ワールドとしての復員小説」、平田由美「母の手紙:後藤明生における「移動」の言語」)。 (2)2009年8月:International Convention of Asian Scholars 6においてパネル・セッションを組織し研究発表を行った(平田'Repatriation/Repatriarchalization: Literary discourse in postwar Japan'-西川'In Search of Fragments of Repatriation Novels Never Written: Reading The Diaries of Yagi Akiko'・朴'A preface torepatriate literature: what was forgotten after the war、'美馬達哉'Reading "Sung Kil-sun case"')。 (3)2010年1月:韓国東国大学文化学術院日本研究所主催のシンポジウム《越境と言語:(脱)植民主義と「国語」の移動》 で研究発表を行い(平田「引揚げ物語をめぐるジェンダーと言語」)、ディスカッションに参加した(平田・朴)。 (4)2010年7月:海外研究協力者(B・ド・バリー)の来日調査に合わせて研究会を開き、研究成果の取りまとめについて打合せを行った(平田、西川、伊豫谷、ド・バリー、坪井、朴、美馬)。 2.研究成果の意義と重要性:「移動文学」が持つ歴史性と空間性を射程に収めることを通して、テクストのグローバルな文脈への位置づけへの道を開き、「植民・戦争・引揚げ」が複雑かつ重要な問題系であることを確認した。この視座からのテクスト分析を進展させ、発展的研究課題に繋げ得たことは重要な成果である。
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