研究課題
平成20年度は、前年度に引き続き、大阪府立大学学術情報センター所蔵の絵入版本について、版面のデジタル化を進め、撮影したものから順に、研究及び公開に適した形になるようデータ加工を行った。また、物語享受史における物語絵本の役割とその意義について明らかにするため、物語の挿絵と本文との関係や、版本に大きな影響を与えた物語絵巻についての考察を並行して進め、静嘉堂文庫所蔵「伊勢物語絵巻」を例に、「静嘉堂文庫所蔵「伊勢物語絵巻」-紹介と位置づけ-」(山本登朗、ジョシュア・モストウ編『伊勢物語創造と変容』219-241頁、和泉書院、2009年4月刊行予定)の論にまとめた。版本の撮影は、前年度と同様にスキャナを用いて行った。平成20年度に撮影を終了した版本は、「おさな源氏」「源氏物語大概抄」「源氏大和絵鑑」「源氏物語絵尽大意抄」「絵入竹とり物語」「新版大字伊勢物語」「絵入伊勢物語」「うつほものがたり」等であり、予定していたものすべてについて、撮影とデータ加工を終了することができた。データ加工に予想していた以上の時間がかかったため、他館所蔵本の調査は既公開のCD-ROM、データベース等が中心となった。絵入版本の版面の研究は、従来はともすれば挿絵の部分のみが注目されがちであり、挿絵部分のみが公開・公刊される場合も多かったが、今回、挿絵のみならず本文の部分を含む版面をすべてデジタル化して公開することは、今後同趣の絵入版本を調査する場合、特に、種々の版がある場合の前後関係を考察する上で、益するところ大であると思われる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
山本登朗, ジョシュア・モストウ編『伊勢物語 創造と変容』和泉書院刊
ページ: 219-241