1.平成19年度に着手した「バイエルン州立図書館蔵『源氏小かゝみ』五巻、写本の翻刻を完了。その一・二巻を『三田国文』第四十七・四十八号に掲載した。 内容:国内諸資料と校合の結果、伊井春樹氏分類の第二系統本(改定本系)に属することは、平成19年度報告書に記した。本文は、無刊記整版本(岩坪健「『源氏小鏡』諸本集成」、絵はない)に近いことが判明。片桐洋一氏は「絵も本文も明暦三年の版本と同じ」(『源氏物語以前』笠間書院)とする。これについては、継続調査する。 意義:写本および版本成立の前後関係、一帖につき一図を付けた梗概書の仕立ては、近世に入り絵巻に代わって盛行した(「3」に述べる『源氏物語詞』や『小倉山荘色紙和哥』等の)画帖形式の出現と併せ考察する必要がある。 2.海外に所蔵されている日本関係の善本の多くはシーボルトの収集品であることが注目され、ドイツ語圏およびイギリスにおける日本研究の歴史を俯瞰的に眺め、「日本語.日本文学研究と国際性の問題」と題し学会発表を行った(全国大学国語国文学会)。 3.松井文庫蔵『小倉山荘色紙和哥』(現地調査・資料購入)の染筆者は、大英図書館蔵『源氏物語詞』(現地調査・資料購入は、平成19年度三菱財団人文科学研究助成による)に三十六名、『多武峯縁起絵巻』に二十二名が共通し、御水尾天皇縁りの人々で、天皇自ら総力をあげて取り組んだ江戸文化の華と結論し、全国大学国語国文学会(08.12.06)、発展的に奈良絵本・絵巻国際会議ワシントン大会(09.03-26)で発表、賛同を得た。
|