研究概要 |
本年度の研究実施計画(対応番号順)に照らし、以下にその成果を記す。 1 前年度の掲載を承けて、バイエルン州立図書館所蔵「源氏小かゝみ』(P.F. Siebold旧蔵、Cod. Jap. 14)の三~五巻を学会誌『三田国文』(第四十九号・五十号・五十一号)に掲載した。 2 同図書館所蔵『源氏物語』(シーボルト旧蔵,Cod. Jap. 18)は大部なもので、影印刊行は次年度以降の課題とした。 3 ウィーン国立民族学博物館所蔵『西行記』四巻(フランツ・フェルディナンド大公旧蔵Jap. 113.982~113.985)については、事前調査により『三田国文』(第四十三号・四十五号)に発表済みであったが、平成21年9月に現地再調査による再点検を行い、紙継ぎの状態・錯簡等の確認をした。同館所蔵の探幽筆「化物画』(模本)も調査。 4 オーストリア国立工芸美術館(旧帝室美術工芸博物館)所蔵「さゝれ石』の複写資料(CD-R)を入手し、影印刊行の準備を整える。 5 大英図書館所蔵『源氏物語詞』(Or. 1287)の再調査(送付されたCD-Rで判読できない文字の確認)、実施計画に関連する新史料として、大英博物館所蔵「源氏物語詞』(ADD179)および『源氏絵詞』(Jap. Ptg. 114)の調査研究。同様の国内調査として、奈良県立図書情報館所蔵「談峯縁起便蒙』の調査研究をした。 6 神奈川県立博物館個人蔵『俵藤太物語』絵巻五軸の翻刻と研究。同形態の群馬県立歴史博物館所蔵の絵巻五軸は、学習院大学日本語日本文学科三巻本と同一の本又であることが明らかになった。個人蔵本には語りの増幅が見られる。 以上、当初の実施計画に加え新史料の発掘を含め、得心のゆく成果を論稿にまとめ得たと考える。そしてこの三年間の成果を『在外日本重要絵巻集成』(研究編600頁・影印編400頁)として、笠間書院より刊行の予定(入稿済み。2010年10月)である。
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