研究課題/領域番号 |
19520165
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
鈴木 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (90206475)
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研究分担者 |
山下 久夫 金沢学院大学, 文学部, 教授 (40239976)
田中 康二 神戸大学, 文学部, 准教授 (90269647)
西田 正宏 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (00305608)
杉田 昌彦 静岡大学, 教育学部, 准教授 (50283320)
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キーワード | 江戸時代 / 注釈 / 契沖 / 本居宣長 / 上田秋成 |
研究概要 |
「江戸古典学年表」に基づき、各自が報告し、全員で討議して以下の見通しを得た。(甲)全体として ○上田秋成においては、注釈行為と物語の創作とが高次において統合されていた。その最も重要な作品が『春雨物語』である。○中世と異なる、江戸の注釈書の特徴としては、全体を捉える眼(集成主義、用例主義、合理主義)、大衆性(図像性、口語性)などがあり、頭註形式や評論の成立、本文校訂へのこだわりなども指摘できる。○各時代における創造的な意味での「誤読」が集積するなかに、同時代読者の読みを復元していく最も本質的な営みがこめられている。 (乙)個別の注釈書について ○北村季吟の仮名草子『女郎花物語』には、中世の古今注の内容が流れ込んでいる。○契沖の『源註拾遺』には、教誡・諷喩主義(勧善懲悪)、発憤・暢情主義とも異なる、芸術至上主義とも言える性質があり、極めて独特である。○契沖の『勢語憶断』には、中世の秘伝的な考えとは異なり、合理的に解釈しようとする姿勢が見られるが、そののちの国学者たちの解釈には中世的なものが残存している。○五井蘭洲の『古今通』「蘭洲本」には、契沖の『古今余材抄』への批判が多く含まれ、伝授批判もある。人間の存在を支える倫理観といったものも伺える。○上田秋成が『土佐日記』の主題を亡児の嘆きと措定したことに触発されて、主題論が活性化し、十九世紀の初頭にいくつもの『土佐日記』注釈が著述されていった。○本居宣長の『古事記伝』は、日本書紀の受容史として捉え返される必要がある。
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