本研究は19世紀の草双紙の様式である合巻について、絵と文の双方から見た総合的な徳川期合巻史の再構築をめざすものである。 具体的には、従来の文学研究・絵画研究で比較的看過されてきた、浮世絵師が描く挿絵に着目し、合巻において最長・最多の業績がある歌川国貞をとりあげて、出版史における位置づけを再検討する。 その方法として、二つの柱を掲げた。一つは国貞が関わった合巻の書誌研究を行なうこと、二つは象徴的な作品に絞って研究を行なうこと。 注釈を続けている『塵塚物語』は同一の作家が他ジャンルの作品を踏まえて作った作で、合巻とは何かを浮き彫りにすることが期待できる作品である。また今年度に論文を書いた『雛鶴笹湯寿』も、草双紙において合巻の前の形である黄表紙との違いがはっきりと見て取れる作品であり、これによって合巻における絵と文の関係を明らかにした。 21年度の成果は以下の通り。 1.江戸時代の出版物をを多く所蔵する全国主要図書館・大学図書館を中心に、歌川国貞が挿絵を描いた合巻および周辺資料の調査を継続して行なった。 2.マイクロ複写と古典籍による資料収集を行なった。 3.書誌調査に基づいたデータベースの構築、WEBコンテンツの作成を準備した。作成をしてきた従来の方法ではデータベースとして拡張性がないため、新たなる形に作り直して検討を重ねた。 4.研究論文「疱瘡絵本『雛鶴笹湯寿』考」(国語国文78-7、2009年7月) 5.研究発表「十九世紀の草双紙を考える-歌川国貞と歌川国芳を中心に」(奈良絵本・絵巻国際会議神戸大会、2009年8月) 6.合巻『塵塚物語』及び関連作品の注釈。
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