「交付申請書」にしたためた通り、2つの課題(A)近世中期歌書刊行年表の編纂(B)小沢蘆庵・栂井一室ほか主要歌人の基礎的研究を、適宜バランスをとりながら進めた。 (A)に関しては、調査済みの書誌データを基に仮年表を作成、今後への第一歩とした。(B)に関しては、まず盧庵について、新日吉神宮蘆庵文庫所蔵資料の調査(国文学研究資料館に所蔵されるマイクロフィルムの調査を含む)を集中的に実施し、略年譜の作成など研究の基盤を築くとともに、「蘆庵文庫目録」の編纂にも着手した。幸い、青裳堂書店より日本書誌学大系中の1冊として刊行の内諾を得ていることから、現在も入稿をにらんで、精力的に原稿の整理に取り組んでいるところである。栂井一室については、いくつかの未見資料を調査することができたので、これも近々論文として発表する予定である。 なお、成果として論文発表したものに、新出の深江屋版を紹介した「表紙図版・題字解説『続和哥極秘伝抄』刊記」(「東海近世」17号、2008年3月)や、香川景平の事績を追つた「梅月堂門のゆくえ」(「金城日本語日本文化」84号、2008年3月)、主に享保年間の水田長隣の添削資料を紹介した「水田長隣加点詠草(上)(下)」(「金城学院大学論集・人文科学編」4巻1号、2号、2007年9月、2008年3月)などがある。
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