「交付申請書」にしたためた通り、2つの課題-(A)近世中期歌書刊行年表の編纂、(B)小沢藍庵・栂井一室ほか主要歌人の基礎的研究-を、適宜バランスをとりながら進めた。 (A)に関しては、昨年度作成した仮年表に、新たに今年度の調査によって得た書誌データを加えて年表の充実をはかった。ただし、依然として素稿の段階を出ないので、今後も鋭意調査を重ねたい。また(B)に関しては、特に藍庵について、新日吉神宮藍庵文庫所蔵資料の調査(人間文化研究機構国文学研究資料館に所蔵されるマイクロフィルム・紙焼き写真本の調査を含む)を集中的に実施し、「藍庵文庫目録」の編刊まであと一歩というところまで漕ぎ着けた(2009年9月末に、青裳堂書店より日本書誌学大系中の1冊として刊行の予定)。 なお、研究成果として論文発表したものに、新出の尾崎七左衛門版を紹介した「表紙図版・題字解説『浄土宗長歌註』刊記」(「東海近世」18号、東海近世文学会、2009年3月)や、水田長隣の添削方法を考察した「点者としての水田長隣」(日下幸男編『中世近世和歌文芸論集』所収、思文閣出版、2008年12月)、江戸中期における香川宣阿と尾張歌壇との関係を明らかにした「元禄-享保期の熱田歌壇と香川宣阿」 (前掲「東海近世」18号)などがある。
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