江戸時代中期における上方歌人を総合的に調査・研究するための柱として、次の2つを掲げた。ついては以下、その項目ごとに記述する。 (1)江戸中期歌書刊行年表の編纂 当期の全体像を大づかみするために、いわゆる歌書(物語・日記紀行・随筆・詩書・絵本などを適宜含んだもの。根拠は、江戸時代に刊行された「書籍目録」の分類)の刊行年表を作成する。どんな本が、いつ、どこで出版され、いま現在どこにどれくらい所蔵されているのかを見渡すことで、和歌を中心とする古典の享受の実態や、知識の開放と伝播の様相を把握したい。 (2)小沢蘆庵・栂井一室ほか主要歌人の基礎的研究 小沢蘆庵や栂井一室、香川景平、石塚寂翁など、当期の上方地下歌人のうち、和歌史的に見て重要度が高いと判断される歌人を取り上げて、資料整備や年譜の作成、家集の分析などの基礎的研究を進めたい。 中でも、小沢蘆庵関係の良質な資料を伝襲する京都・新日吉神宮蘆庵文庫については、その目録の編纂と解題の執筆をめざす。
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