本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 第1に、研究代表者と研究協力者を中心に「仁和寺所蔵古活字研究会」を組織し、仁和寺所蔵古活字の整理・分類、および予備調査で作成した調書の整備を実施した。 第2に、古活字研究のための基礎的な文献目録を作成するために、日中韓の研究協力者、およびキリスト教研究者に依頼して参考文献目録のリストを作成し、同時に研究文献の収集を行った。また、必要な古活字版を閲覧・複写した。 第3に、仁和寺に残存する心蓮院文書その他の調査、および古活字刊行に関する記録の有無の確認を仁和寺側に依頼し、継続調査中である。 第4に、仁和寺所蔵古活字の写真撮影(写真・デジタル写真)を行い、これをテキストデータ化し、コンピュータ上で整理分類し、資料を作成した。 第5に、第4の成果を基に、仁和寺所蔵古活字の使用状況を『倭玉篇』影印本・国会図書館所蔵本・天理図書館所蔵本と対照し、明確にした。 第6に、第4・第5の成果を基に、慶長古活字版の印刷技法を究明するため、仁和寺所蔵古活字研究会において、中間発表を兼ねた意見交換会を開き、進捗状況を報告し、分析方法等を検討した。 第7に、木製活字印材の使用樹種を特定するため、京都大学生存圏研究所に分析を依頼し、第1回の合同調査を行った。調査の結果、樹種鑑定および製材の部位などを特定するためにさらに半年程度の期目が必要であると判明し、来年度に継続して行うことになった。 第8に、活字の付着物についての分析を奈良文化財研究所に依頼した。分析方法を考案するための期日を要するため、来年度に実施することになった。
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