本課題を達成するために必要であると考える五山版、義堂(1325-88)に影響を与えた師僧の作品集、さらに義堂と交友の存した僧の作品について、所在を確認し、収集すべきか否かを判断するために、大阪府立中之島図書館、東京大学文学部国語研究室、宮内庁書陵部、内閣文庫、国会図書館、京都大学附属図書館、天理大学附属天理図書館、禅文化研究所、お茶の水図書館成簣堂文庫などで実地に踏査した。 義堂編著偈頌集『新撰貞和集』『重刊貞和集』(以下、両集と略称)に関連しては、彼地著名禅僧の五山版作品集若干部に的を絞り、複写・収集・整理を続行した。 虎関師錬(1278-1346)が宋代禅僧の作例によって四六文の作法を説く『禅儀外文集』については、五山版を始め、注釈書をも含めて収集を継続した。虎関の義堂への影響関係の解明を目的とする。 『東山空和尚外集』については、義堂の抄物とされる国会図書館蔵『東山外集鈔』を収集した。 諸本における内容解明の進捗状況については、五山版の両集への注記の異同と信憑性、さらに入集作品作者の妥当性、特定について試みつつある。収集作品の特徴、性格に関しては、最多の二人である来朝僧の無学祖元と清拙正澄作品を中心に別集との重複状態、収集源の詮索を進めた。彼地の禅僧の入集作品と五山版との重複状況を解明する準備も始めた。 義堂の作品集『空華集』の第一読解は、抄物の利用、活用を心掛けながら進行中である。
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