第一に、The Ladies' Home Journalにおける「電話」の表象を考察し、その不在の意味を分析した。Edward Bokが編集長を務めた時代に焦点をあて、電話を扱う広告や小説を探した。その結果、現実の社会での電話の浸透よりもかなり遅いペースで雑誌の表象として描出されていることが明らかとなり、ビジネスの世界に有効とされた電話を、同誌の言説から意図的に遠ざけている編集の操作が存在したことが分かった。この成果は、他の14名の執筆者とともに、平成21年秋に刊行予定の『交錯するメディアとアメリカ文学(仮)』(山下昇編著。英宝社刊)への掲載が確定している。 第二に、同誌に連載された小説が発表後に著書の形で出版されたものの、現在ではまったく忘れられた存在となっていたり、掲載後に数冊の作品を出版し、女性作家辞典などには紹介されているものの再評価が行われていない作家の存在を確認した。当時は流行した作家の連載作品を中心に分析をすすめた。同誌が小説作品と他の家事アドヴァイスなどの言説を同時に掲載している形態に注目し、小説作品と同様に家事アドヴァイスという異種の言説を発表する作家を個別にとりあげ、その特殊性に着目した。昨年度に続いてNew York Public Libraryにおいて、インターネットでも収集ができない古い文献を読むことが可能となり、雑誌掲載当時の女性文化構築に有効だった書物と同誌の内容の比較が可能となった。
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