Edward Bokが編集長を務めた時期の『レディーズ・ホーム・ジャーナル』を、昨年度に引き続き「電話」という主題から論じた。その作業の過程で、広告、エッセイ、表紙、小説作品というさまざま言説を相対的に利用して、編集部が雑誌の理想とする女性像提示を試みていたことを明らかにした。同誌を構成する多層な言説は、相互に関連しながら雑誌が主張するメッセージを構築していたことは、他の主題にも同様のことがいえる。本年度は、「自然」や「環境」という主題を中心に、同誌の言説を分析することを試みた。 「電話」という主題に焦点をあてると、それが男性のおもな活動領域とするビジネスの世界を表すひとつの記号であり、同誌が提唱する理想の女性たちの活動領域である家庭から距離をおいて表象されている。「自然」や「環境」という主題は、男女の領域である「外」の社会と「内」なる家庭の領域の中間となる場の役割を担っているように思える。同誌は、家庭という領域を尊重しながらも、創刊当時からガーデニングの主題を毎号扱い、花の種子の販売広告も多い。さらに、郊外での健全な生活を提唱する同誌は、自然界の力を小説やエッセイにおいて扱うことも多い。保守的な女性たちの健康維持のために自然界との接触を提唱しているようにもみえるが、これらの主題は、家庭という領域を「外」の世界とつなげ、社会も家庭をも含んだ「環境」という領域の構成員であることを性たちに自覚させていたと思われる。 同時代の女性たちの「自然」や「環境」への意識を探りながら、継続して、同誌の言説から、これらの主題を分析し、女性たちの自然観や環境観を探求していきたい。
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