研究代表者(シュミッツ)および研究分担者(沼田)は以下の研究課題に取り組んだ。 (1) 19世紀以来の歴史科学と文学研究の関係性についての分析。とりわけ、両分野の物語的な基盤と歴史科学を学術的な研究分野として認知すること。 (2) イタリア・ルネッサンスというテーマに関するヤーコブ・ブルクハルトの手稿についての調査。 (3) 現代文学研究の側面から見た歴史的観点を踏まえた研究。 具体的な活動として、沼田はバーゼル大学図書館にて、ヤーコブ・ブルクハルトに関する手稿ファイルの調査を行い、手稿に挟まれるないし添付されたメモにブルクハルト自らが記載した内容が持つ重層的な意義を解明した。さらに、日本におけるブルクハルト受容の歴史について考察し、学術論文を発表した。 シュミッツは、とりわけ「文学における歴史記述」というテーマ領域に取り組み、学術論文2編を発表した。この研究分担の具体的な準備のために、シュミッツはダボス(スイス)でトーマス・マン会議(2008年8月3日から8日)へ参加し、多岐にわたるトーマス・マン研究者(H. コープマン教授およびチューリッヒのトーマス・マン資料館の館長であるトーマス・シュプレッヒャー博士)との専門的な討議を行った。この学術会議への参加に関連して、シュミッツはチューリッヒのトーマス・マン資料館およびチューリッヒ中央図書館(旧ヴァッサーキルヒェ図書館)において調査を実施し、また調査と資料収集のために、マールバッハのドイツ文学資料館(DLA)を2008年8月13日から19日まで訪問した。
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