本研究の目的は、従来等閑視されがちなMaria Edgeworth、Sydney Owenson、Jane porter、Anna Porter、Jane Westなどのロマン主義時代の女性作家たちの作品を、時にCharles Robert Maturinなどの同時代の男性作家の作品と比較検討しながら、仔細に分析し、歴史小説という新たなサブジャンル構築に女性作家たちが多大なる寄与・貢献をおこなったことを検証することである。さらには、その検証の過程で、女性作家たちが構築し発展させた歴史小説が、ScottのWaverley(1814)を女台めとする、いわゆるウェイヴァリー小説に、小説のプロット、枠組み、テーマ、素材、手法などを提供したことを跡付けるものである。 平成22年度は、本研究に密接にかかわると思われるJane Porter、Jane West、Christian Johnstone、Theodore Melvilleなどの作品を大英図書館等から取り寄せた。また文献のさらなる充実をはかるために、同図書館に資料収集にも出かけた。収集した資料・文献は、精読し、仔細に分析した。平成22年度は、当該研究の最終年度になるため、その成果の一部を、「シャーロット・ブロンテとロマン主義時代の歴史小説・国民小説-『ヴィレット』に見られる枠組みの変容」という題で、日本ブロンテ協会2010年大会(招待講演、2010年10月16日、近畿大学)において発表した。さらに、平成21年にギャスケル協会でおこなった発表の成果を、「『北と南』とロマン主義時代の歴史小説」(『エリザベス・ギャスケルとイギリス文学の伝統』、大阪教育図書、2010年9月)という題でまとめ、公表した。
|