19世紀中期のアメリカでは大衆詩がひろく読まれたが、それは単にテクストとして読まれたのではなかった。それにはしばしば、当時の最新技術であった精緻な木口木版画(wood engraving)が添えられていて、目でも楽しむことができるようになっていた。すなわち大衆詩の流行は、当時の印刷文化の著しい多面的な発達に支えられていたのであって、現在、顧みられることの少ないMary Hallock Footeなどのイラストレーターや、A. V. S. Anthonyなどの彫師が、大衆詩人たちと同様、当時の出版文化を牽引していたのである。
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