研究概要 |
研究計画の最終年度であったので、昨年度までの研究の補完と総括を行なうと同時に、その成果を3つの学会で発表した。具体的には下記のとおりである。 (1)詩人シャーロット・スミスとヘレン・マライア・ウィリアムズの予約購読一覧から、ロンドンの文芸サークルとそのネットワークの研究の補完を行なった。その成果は、まず「18世紀末女性詩人とその支援者-C.SmithとH.M.Williamsの事例を並列して」(第36回イギリス・ロマン派学会全国大会,2010年10月,於大阪大学)となり、スミスとウィリアムズの共通の支援者を明らかにして、同時代ロンドンの文芸支援者とそのネットワークに新たな光を当てることができた。この成果の一部を発展させたものが、筆者が企画したシンポジウム「拡大する読者ネットワーク:文学嗜好の共有が作り出す19世紀文芸思潮」(司会者兼発題者,第2回欧米言語文化学会全国大会,2010年12月,於日本大学)である。他の2名の発題者に19世紀初頭英国と19世紀後期アメリカの文壇と読者層について論じてもらい、筆者は「予約購読者一覧にみる読者・支援者網の拡大:Helen Maria Williamsの『詩集』(1786年)の事例研究」で18世紀末の状況を論じ、18世紀末から19世紀の英語圏で拡大していく文芸支援者の歴史的潮流を具体化できた。 (2)スコットランドの文芸支援者とそのネットワークについての研究を、特に詩人ジャネット・リトルを中心に行ない、その成果を「スコットランド女性詩人とその支援者:ジャネット・リトルの事例」(日本カレドニア学会2010年度大会,2010年9月,於拓殖大学)として発表した。この研究を通して、ロバート・バーンズとその周辺人物との関係だけでなく、上記ロンドンの文芸支援者層との密接な関係を明らかにできた。研究成果の論文化は23年度中に実施する。
|