平成19年度は、本研究全体の計画として掲げた (1)18世紀以降の思想史、美術理論史における「視覚」と「触覚」という二項対立的な知覚の把握の系譜の整理 (2)ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』における「視覚」・「触覚」概念と、(1)の思想史的系譜との関係の考察 (3)人文的インターフェース論の構築:「視覚」と「触覚」をめぐる言説(ベンヤミン、マクルーハンを含む)を技術メディア(とりわけハイパーテクスト)の理論と関係づける という三つの研究課題のうち(1)に取り組む計画であったが、岩波書店『思想』掲載予定(2008年8月・9月)の論文「〈視覚-触覚〉の言説とメディア理論-ベンヤミンとマクルーハンの邂逅-」(上・下)という形で、(1)(2)の課題についてはほぼ達成できた。この論文では、「視覚-触覚」問題をモリヌークス問題をめぐる哲学上のコンテクスト、フィードラー、ヒルデブラント、リーグルを中心とする芸術学のコンテクスト、両者をつなぐヘルダーの言説をたどることによって、マクルーハンとベンヤミンにおける「視覚-触覚」問題の親近的な関係を明らかにすることを試みた。
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