平成20年度は、本研究全体の計画として掲げた (1) 主に18世紀以降の思想史、美術理論史における「視覚」と「触覚」という二項対立的な知覚の把握の系譜の整理 (2) ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』における「視覚」・「触覚」概念と、(1)の思想史的系譜との関係の考察 (3) 人文的インターフェース論の構築:「視覚」と「触覚」をめぐる言説(ベンヤミン、マクルーハンを含む)を技術メディア(とりわけハイパーテクスト)の理論と関係づけるという三つの研究課題のうち、(1)については岩波書店『思想』2009年1月号・2月号に掲載された「〈視覚-触覚〉の言説とメディア理論--ベンヤミンとマクルーハンの邂逅--」(上・下)というかたちで達成できた。また、(2)については『複製技術時代の芸術作品』の翻訳(来年度河出書房新社出版予定)および上記の『思想』論文でほぼ達成することができた。 また、『思想』に掲載予定の論文「物たちの「シュルレアリスム的な顔つき」--ベンヤミンとシュルレアリスム」を執筆したが、ここでも技術と身体性の問題を扱っている。 (3)については文献を調べ、集める段階でとどまっているが、これについてさらに掘り下げることは最終年度となる平成21年度の課題である。
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