1. 基礎研究:平成19年度に引き続き、冷戦と文化統制、封じ込めの政策と演劇との関係にっいての基本文献、具体的な資料となる文献を中心に、冷戦に関する文献を収集・通読。19世紀以降のアメリカにおいて性の政治学や権力の力学が資本主義と結びつけられて構成・布置される過程およびリベラリズムという概念の形成過程を確認しつつ、背景となるアメリカの思想史を概観する作業を進め、現在のグローバル資本主義下におけるリベラリズムの諸言説を演劇という枠組みにおいて検証。 2. 20年度テーマ研究:「文化的リベラリズムの芸術家たち:前衛演劇とマイノリティ演劇」のテーマを中心に、いわゆる非政治的・美学的・前衛的とされるアーティストやマイノリティ演劇を標榜するアーティスト(テネシー・ウィリアムズ、エドワード・オルビー、前衛演劇)の軌跡を辿り、彼らが推進した美学的側面におけるリベラリズムを検証。冷戦期の当局の文化統制および19年度分析対象とした社会派の作家との比較検討。非政治的と評価されてきたテネシー・ウィリアムズの諸戯曲が冷戦期に当局が推進した男女の役割とセクシュアリティの表象の指針に一見沿いつつ、実はそのクィアな表象が撹乱的な側面をもつことを確認。さらに68年世代のオルタナティヴ演劇(リヴィング・シアター、オープンシアター、パフォーマンスグループ等)を検証しつつ、美学的リベラルともいえる彼らが標榜した演劇と冷戦期の思想・文化統制が与えた影響との相互関係を検討。また、冷戦後の劇場の変遷について検証する作業を開始。
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