研究概要 |
当該課題研究の一年目となった今年度は、まずマスキュリニティと同性愛の関係についての歴史研究を整理し、『ジェンダー史学』にSean Brady,Masculinity and Male Homosexuality in Britain, 1861-1914の書評を掲載した。また、当時のセクソロジーとワイルドがどういう関係にあったかを思想史的に辿った、「同性愛者の身体、あるいは「心」-クラフト=エビングとオスカー・ワイルド」という論考を金井淑子編『身体の語り方/語られ方』(明石書店)に執筆し、5月に刊行の予定である。この論考は今後の当該課題研究の方向性を決めるものとなる。また、漱石文学とワイルドの関係をかつてないスケールで考察した論考をまとめ、これは単著として今年度の夏くらいまでに刊行される予定であるが、この内容の一部を、近代日本におけるマスキュリニティの変容の歴史と絡めて、5月にロンドン大学バークベックカレッジにて開催されるマスキュリニティの国際学会で発表する予定である。さらに、ワイルドの女性像の本質にある、ペルセポネという女神のイメージをペイタに遡って考察した、「ペルセポネと透明性の美学」を『ペイター論集』第4号に掲載した。 総じて、初年度にしては大変充実した一年であったといえよう。
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