研究概要 |
(1) ictusという共通の単位によって「歌われた部分」も「それ以外の部分」も同様の方法によって量的に計測出来ること,(2)またそれぞれ24 ictus, 32 ictus, 36 ictusという長さを持つ3種類のmoduleを想定することで演劇テキストの諸部分と諸部分の関係,すなわち量的な構造の全体と詳細が明らかになるという認識を再確認すると共に,アリストパネースのその他の作品の構造において詳しく同様の検討を行った。こうした法則性の存在がアリストパネスの作品において一般的に確認されるならば,現代の研究者たちがあたかも避けているかのように見える,「韻律研究の延長線上にあるべき演劇構造の研究」という,かつての前提を復活させることが出来るだろうという想定のもとに,同じくアリストパネースの作品全体にわたり量的構造を詳細に分析した。そのよう.な前提が復活するならば,この量的な法則性の認識に照らして,もう一度古代ギリシア喜劇・悲劇の作品伝承において,近年の本文校訂の成果を検証することが可能になるという証拠を求めて調査を続けた。その結果,『アカルナイの人々』と『鳥』に関してはかなり満足の行く結果を得られたが,それ以外の作品に関しては,テキストの状態と不確かさと複雑な韻律構造のために満足の行く結果を得られなかった。最初の前提,すなわち「24 ictus, 32 ictus, 36 ictus」という3モデュールに限定したことに問題があったかもしれないので,引き続き,その他のモデュールを仮説に加えて検証を続けるべきであるという結論を得るに至った。
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