以前からイギリスのハル大学図書館にあるラーキン資料室を訪れて、草稿をはじめ、さまざまな資料を閲覧してきたが、19年度もここを訪れてこれまで未調査の草稿や資料を調査した。特にラーキンは韻に対してなみなみならぬこだわりをもっているので、押韻形式とそれぞれの詩の内容との関係に焦点を当てて調べた。押韻形式に関しては、比較的長い詩において、これまで他の詩人に用いられたことがなかった新しい型を使って独特の効果を出していることがわかった。またラーキンは完全韻と不完全韻を巧みに使い分けることによって、話者や詩中の人物が抱く微妙な感情の変化や不信感、共感などをより効果的に表現していることも明らかになった。例えば恋人同士の不信感や不釣り合いな関係を示唆する場合には不完全韻を、二人の共感を表す場合には完全韻を使用している。さらに反対の意味を持つ単語や不協和音を響かせる単語を互いに押韻させることで皮肉な口調を示唆している例も具体的に調査した。韻律に関しても、ラーキンは韻と同様に詩の内容に応じて使い分けていることをいくつかの詩で実証した。次にケンブリッジ大学や英国図書館を訪れ、イェイツやハーディの詩作品中の韻や韻律の研究に着手した。それらは使用法や特質において、ラーキンとはそれぞれ異なってはいるが、詩の内容と密接な関係を有しているのではないかという感触を得た。以上の研究成果を今年は発表できなかったので、来年度に発表したいと考えている。
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