本研究は、世紀転換期ドイツにおける「文化」形成の問題を、主として「生」の言説に集約されていく「知」の複合状況に観察される「知の変動]において考察することを主題とするため、そのための資料収集とその解読、分析が中心課題となる。従って本年度は、主として国内外での資料収集、資料蓄積を中心に活動して研究を進めると同時に、一部その分析、解読を行った。 1)海外での資料収集のため、主としてベルリンに滞在しドイツ国立図書館、同市内のいくつかの博物館、資料館を訪問し、知見を深めるとともに、資料の収集を行った。 2)ドイツでの資料収集では、「生」の言説の形成の上で大きく作用したいわゆる「生の哲学」に関わる文献の解読、分析に取りかかるとともに、そことドイツ・オーストリアの作家との言説上のかかわりを見る作業をおこなった。作家では主として初期Hofmannsthalと「生」の言説との関わりを見る作業を開始した。 3)国内では、北海道大学の同僚研究者との研究懇談。意見交換を行い貴重な知見を得ることが出来た。また同時に、同大学におけるハプスブルク関連資料の閲覧、複写をさせて頂いた。 4)この他、同時期におけるNietzscheの影響を探るため先行研究の解読分析を行った。さらにW. Diltheyについても先行研究を収集し解読分析にとりかかり、時代の「知の変動」との関わりについての知見を収集した。 5)さらに同時期における顕著な文化制度の変化における「技術的知」の評価をめぐるいくつかの言説についても、海外での資料収集を含め資料の蓄積を行った。 6)上記研究をスムーズに行うため、本年度予算からモバイル型のノートパソコン1台を購入し、資料の集積、文献表の整理、分析等に使用した。 基本資料の収集を通して、世紀転換期のドイツの「学」の転換と、「芸術・文化」における「客観」から「意識性」「現象性」の追求という「知」の変動とが平行して起こっていく事態についての解明に端緒が開かれた。
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