本研究は、世紀転換期ドイツにおける「文化」形成の問題と、主として「知」の複合状況に観察される「知の変動」を伴って生成される「生」の言説との関わりを考察することを主題としている。従って本研究では、そのための資料収集とその解読、分析が中心課題となる。本年度も、昨年に引き続き主として国内外での資料収集、資料蓄積を行うと同時に同僚研究者らの協力も得て、その分析、解読を行った。 1)海外での資料収集のため、前年度に引き続き主としてベルリンに滞在しドイツ国立図書館を利用し資料の収集と分析を行い、さらに同市内のいくつかの関連博物館、資料館、展覧会等を訪問し知見を深め、資料の収集も行った。 2)本年度は特にドイツでの資料収集で、19世紀ドイツの「市民社会」における「生」の言説の生産へと作用する「生権力」「生政治」に関する資料を収集し、それらの文献のノート、解読分析を行った。 3)国内では、東京医科大学とほっ北海道大学の同僚研究者との研究懇談、意見交換を行い貴重な知見を得ることが出来た。 4)上記1)に関連し、同時期におけるNietzscheの影響を探るため、引き続き先行研究を含めた資料の解読分析を行った。 5)さらに特に建築、都市計画に関わって、同時期における顕著な文化制度の変化における「技術的知」の評価をめぐるいくつかの言説についても、海外での資料収集を含め資料の蓄積を行った。 基本資料の収集を通し、生気転換期ドイツにおける「生」権力の強化、浸透の状況に関する知見が深まり、これと同時期の「生」言説の関わりについて一層深めていくことの必要性についての認識が得られた。
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